「ない」を求める若者の話
昔、「ない」ということがわからない若者がいた。
彼は村の一人の僧侶に尋ねた。
「『ない』というのは、どういうことなのですか。教えてください」
僧侶は答えた。
「明日、目覚めたらあたりをよく見なさい。そして『ない』を探してごらんなさい。あなたの家に見つからなければ村に出て探しなさい。そして日が暮れたら、私のところにもう一度いらっしゃい」
翌日若者は言われるままに「ない」を探した。日が暮れて、何の成果も得られぬまま、若者は僧侶のもとにおもむいた。
「探しました。でも、『ない』はどこにもありませんでした。この村にはないのでしょうか」
僧侶はにっこりして答えました。
「いま、ありました」